恥にまみれても
「生きるということは、恥にまみれるということだ」
私の祖父が、ふと口にした言葉だ。
私は、毎年の年末年始に祖父母に会いに帰省していた。
しかし、2年間の浪人生活中、私は一度も祖父母に会いに帰省しなかった。
祖父母には会いたいに決まっている。
しかし、“浪人生”という後ろめたい姿を祖父母に見せたくなかった。
受験本番が近づいた2月、私は夢を見た。
祖父母が私を起こしにくる夢だ。
夢の中で、私を心配そうに起こしてくれた。
「大丈夫、行ってくるね。」と私は祖父母に告げ家を出た。
振り返ると笑顔で見送る二人がいた。
その瞬間、目が覚めた。
自分は今まで、本当に沢山の人に支えられて生きてきた。
しかし、損も得もなく、ただ私という人間を尊ぶ気持ちを持ち続け、
無償の愛を注いでくれる存在はごく少数だ。
最後の最後に、本当につらい時期を乗り越えられたのは、
今まで私を愛してくれた人への感謝の気持ちだった。
あの夢は、忘れかけていた”大切な想い”を蘇らせてくれた。
恥にまみれていた私を、奮い立たせてくれた。
嘘のような、本当の話だ。
あと少しで本番がやってくる。
そろそろ、落ち込む自分に飽きてほしい。
祖父母や両親に、「ありがとう」と、
感謝の言葉を伝えるのは小恥ずかしいだろうから
「合格したよ」
と、伝えられるようにすればいい。
君のカッコよくない所も、愛してくれるよ。